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コラム

ESHREガイドライン:子宮内膜症の女性の管理について

ESHRE(European Society of Human Reproduction and Embryology)ガイドライン:子宮内膜症の女性の管理 Human Reproduction, Vol.29, No.3 pp. 400-412, 2014 Advanced Access publication on January 15, 2014 doi:10.1093/humrep/det457

 子宮内膜症とは、子宮外に子宮内膜様組織が存在する病態です。子宮内膜症は色々な場所に起こります。頻度が高いのは骨盤内で、特に腹膜や卵巣にできることが多いです。他に膀胱や直腸などの腸、肺や皮膚にできることもあります。卵巣にできた子宮内膜症が進行すると、卵巣内にのう胞ができます。これをチョコレートのう胞といい、のう胞の中身は古い血液成分でチョコレートによく似ています。子宮内膜症は起こっている場所に慢性的な炎症反応とそれに引き続く癒着を引き起こします。
 子宮内膜症に罹患した一部の女性は無症状ですが、中には日常生活に支障をきたすような月経痛、排便痛、性交痛などを伴ったり、不妊症をもたらしたりします。子宮内膜症の正確な罹患率は不明ですが、生殖年齢の女性の2~10%、不妊女性の50%と推測されます。子宮内膜症を持つ女性の多くが不妊症に直面しているのです。
 子宮内膜症がどのような機序で不妊を引き起こすかは明らかにはなっていません。原因として、癒着により子宮や卵巣卵管の解剖学的位置に異常が生じ、卵管の可動性や通過性が障害されること、免疫異常やサイトカインの異常が着床を障害したり、精子や受精卵を障害したりすることが考えられています。
 ESHREとはEuropean Society of Human Reproduction and Embryologyの略で、日本語ではヨーロッパ生殖医学会と呼ばれています。不妊に関する二大国際学会の一つです(もう一つはASRM;American Society for Reproductive Medicineです)。
 2005年に公表された子宮内膜症の診断と治療のためのESHREガイドラインは、日本においても子宮内膜症の臨床診療の基準となっています。子宮内膜症に悩まされる女性に対し、より良い診断と治療を提供するため、ガイドラインは年数年ごとに更新されてきました。現在の最新版である2014年のガイドラインの内容は、一次および二次予防、疼痛管理、子宮内膜症の既往歴のある女性における更年期症状、悪性腫瘍などに関する内容を含みますが、今回は不妊治療に関する部分を抜粋して紹介いたします。

①一般不妊:軽度の子宮内膜症に対する腹腔鏡手術は術後の自然妊娠率を改善します。また、チョコレートのう胞の場合、手術の術式は内容物の吸引や内膜症腔の焼灼よりも嚢胞の核出を勧めています。
②一般不妊:中等度から重症の子宮内膜症の場合、大規模な研究はまだありませんが、幾つかの研究結果では、腹腔鏡手術後に自然妊娠率が改善することが示されています。
②子宮内膜症を持つ不妊女性に対する自然妊娠率の向上を目的とした術後の補助ホルモン療法(経口避妊薬, 黄体ホルモン, GnRH アゴニストやダナゾールなど)は勧めません。
③サプリメントなどの栄養補助食品、補完代替治療については利益または有害性が不明であるため使用を推奨しません。

④人工授精:軽度の子宮内膜症においてゴナドトロピンを用いた卵巣刺激は妊娠率を上昇させます。

⑤生殖補助医療(ART):卵巣刺激法の種類について。軽度の子宮内膜症に対しアンタゴニスト法はGnRHアゴニストを使用する方法と同等の治療成績です。

⑥生殖補助医療(ART):子宮内膜症の手術後に行うARTを目的とする卵巣刺激によって、子宮内膜症の再発率は増加しません。

⑦生殖補助医療(ART):子宮内膜症を持つ女性に対するART前の、3-6か月間のGnRHアゴニスト投与は妊娠率を上昇させます。

⑧生殖補助医療(ART):子宮内膜症を持つ女性の採卵に際し、卵巣膿瘍予防のため抗生物質を処方することが勧められます。 (当院では、採卵前の消毒の徹底や抗生物質の投与を行っています。)

⑨生殖補助医療(ART):不妊女性において3cm以上のチョコレートのう胞をART前に核出することは妊娠率を上昇させません。3cm以上のチョコレート嚢胞の核出術は疼痛の改善を期待する場合、または内膜症によって採卵が難しい場合は考慮します。

⑩不妊女性に子宮内膜症の手術を行う場合は、手術に伴う卵巣機能低下についてよく説明し、手術に伴う利益と有害性について理解を得ることが大切です。

 ひとまとめに子宮内膜症と言いましても、人によって病状は様々です。子宮内膜症に対する手術は、自然妊娠においては有効なことがありますが、生殖補助医療(ART)においては慎重に適応を決める必要があります。ガイドラインを参考に、その人の病状や年齢や卵巣機能、今までの経過を総合的に判断し、より良い治療を目指したいと思います。

京野アートクリニック 医師部 小泉 雅江