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KYONO ART CLINIC 京野アートクリニック 仙台

コラム

ピロリ菌感染がヒトの生殖能力を低下させるか?

 こんにちは。医師部の戸屋です。
 1月、2月、3月は『いく』『にげる』『さる』とよく表現されるように、あっという間に年度末ですね。また、東日本大震災から5年の月日が経ちました。被災地でも徐々に復興が進んでいます。それでも、復興はまだ道半ばです。あの日を忘れず日々歩んで行きたいと思います。

 新年度、そして待ち遠しい、あたかい春はもうすぐです。
 新年度といえば、春の健康診断を受けられる方も多いかと思います。検診のオプションにピロリ菌検査というのもあります。ピロリ菌感染が判明したが、除菌治療と不妊治療のどちらを優先させたらいいかという相談をいただくことがしばしばあります。
 今回は、このピロリ菌感染と生殖能力についてのレビューの論文をご紹介いたします。
Can Helicobacter pylori infection influence human reproduction?
Moretti E et al. World J Gastroenterol. 2014 May 21;20(19):5567-74

 ヘリコバクター・ピロリ菌は胃潰瘍や胃がんの発生にもつながる原因としてよく知られていますが、消化器系以外の病気にも関連していることが明らかになり注目されつつあります。

 この論文では、特にCagAという病原タンパク質陽性のピロリ菌菌株に感染した個体で発生した生殖能力の低下に関する証拠を報告しています。

 2002年に筆者らのグループが最初にピロリ菌と不妊に関して報告しています。血中のピロリ菌抗体検査で、コントロール群では29.7%に対して女性不妊の44.8%がピロリ菌抗体陽性でした。血液検査陽性の女性全例が卵胞液でも陽性でした。2004年には日本の研究グループでも同様の報告がなされました。2009年には、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)症例でも、ピロリ菌IgG抗体陽性例が、対照群で20%なのに対しPCOS群で40%と、PCOS群で有意に高いとの報告もされました。その後、2010年には、原因不明不妊の女性の頚管粘液中に検出されてインビトロで精子の侵入を阻害することがわかりました。
 また、女性では、ピロリ菌に感染していると、ピロリ菌に対するタンパク質である抗体を持ち、この抗体が精子と反応するために精子の運動性を低下させて、卵子との融合を妨げると見られています。さらに、CagA陽性の菌に感染すると、胎児の死因ともなる妊娠高血圧腎症のリスクが高まるという報告もあります。これは、妊娠マウスの実験で免疫応答の変化によることが証明されています。

 男性では、コントロール群では36.1%に対して男性不妊の50.8%がピロリ菌抗体陽性でした。ピロリ菌に感染していると、精子の運動性、生存率、正常な形状の精子数が低下してしまいます。精子の損傷を引き起こし得る炎症サイトカインの増加やアポトーシスと壊死の増加と関連していることが証明されています。

 本論文ではありませんが、ピロリ菌感染は、妊娠後の重症悪阻との関連も言われております。状況が許せばですが、ご夫婦でピロリ菌感染の検査、治療を考えてもいいのかもしれません。

京野アートクリニック 医師部 戸屋 真由美