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コラム

無症状の筋腫に対する核出術が不妊治療に及ぼす影響について(婦人科 小泉)

Removal of myomas in asymptomatic patients to improve fertility and/or reduce miscarriage rate: a guideline.

Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Electronic address: ASRM@asrm.org; Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine.
Fertil Steril. 2017 Sep;108(3):416-425. doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.06.034.

 子宮筋腫は子宮に最も多く見られる腫瘍で、生殖年齢女性の70%に見られます。症状のある患者さんへの手術療法は生活の質を改善するために広く奨められています。一方で、子宮筋腫はあるが無症状の患者さんに対して、不妊治療において妊娠率の改善を目的に手術を行うことは議論中です。

 子宮筋腫の発生する部位によって細かく分類すると漿膜下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫があります。

 この論文では様々な論文を総合して、妊娠率と妊娠維持率にどのように影響があるか筋腫の部位別の治療方針について提案をしています。

 始めに、論文では推奨の基準を以下の3段階で評価しています。

 Grade A:行うよう強く奨める良い根拠がある

 Grade B:行うよう奨める公正な根拠がある

 Grade C:行うよう奨めるには根拠が充分ではない

【漿膜下筋腫、筋層内筋腫について】

1・前提として、様々な研究デザイン、相反する命名法、筋腫のサイズや場所の連続性、不十分な患者の募集のため、妊娠率と妊娠維持率における子宮筋腫の影響についてのこれまでの研究の解釈は非常に限定的である。

2・不妊治療の有無に関わらず、子宮筋腫が妊娠率を減少させると結論づける根拠はない。 (Grade C)

3・筋腫のサイズ、位置(粘膜下筋腫と内腔に影響する筋層内筋腫を除く)が妊娠率低下と初期流産の増加に関係すると結論づける根拠はない。(Grade C)

【漿膜下筋腫、筋層内筋腫について】

1・漿膜下筋腫の核出が妊娠率を改善させると結論づける根拠はない。(Grade C)

2・筋腫の核出術後の体外受精が妊娠率、生産率を改善しないという公正な根拠がある。(Grade B) ただし、筋腫の部位や大きさによる可能性がある。

3・筋腫核出術(腹腔鏡手術、開腹手術)が流産率を改善すると結論づける根拠はない。(Grade C)

【粘膜下筋腫について】

1・粘膜下筋腫の子宮鏡下核出術は妊娠率を改善するという公正な根拠がある。(Grade B)

2・粘膜下筋腫の子宮鏡下筋腫核出術が初期流産率を低下させると結論づける根拠はない。(Grade C)

【この論文では不明なこと】

1・子宮筋腫が出産に与える影響

2・子宮内腔の変形の程度が子宮筋腫核出術の効果に与える影響

3・粘膜下筋腫を伴わない筋層内筋腫が不妊治療に及ぼす影響

4・ARTにおける筋腫核出術の恩恵

【論文を通じての推奨事項】

 子宮内腔を変形させる筋腫は無症状であっても筋腫核出術が妊娠率を恐らく改善する。一般的に子宮内腔に影響を与えない子宮筋腫に対する手術は奨められない。しかし、幾つかの状況では、例えば採卵に際して卵巣への到達を困難にするような骨盤の構造を変化させるような筋腫に対して、核出術は合理的かもかもしれない。と論じています。

 終わりに、子宮筋腫には実に様々なタイプがあります。10cmを超える大きなものや1cmに満たない小さなもの、1個だけであったり十数個であったり、粘膜下筋腫や漿膜下筋腫であったり。不妊治療中の子宮筋腫に対する治療を行うかどうかの判断は難しいことがあります。今回の論文で治療方針がはっきりしたのは、子宮内腔を変形させる筋腫に対する手術が妊娠率を改善するということです。その他のタイプの子宮筋腫については患者様の年齢や今までの治療歴、筋腫の場所や数によって個別に対応させていただく必要があるようです。

(婦人科 小泉雅江)