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KYONO ART CLINIC 京野アートクリニック 仙台

コラム

ビタミンDについて~さまざまな視点から~

以前の論文紹介でもご案内しましたが、今回は、ビタミンDの効用について女性側だけでなく男性への影響、またヒトとしての健康への影響について紹介いたします。

ビタミンDは女性の生殖にとても重要で、ビタミンDが不足すると体外受精の妊娠率低下・習慣性流産への関連・新生児の体重や妊娠期間・妊娠高血圧症候群といった妊娠合併症・新生児の発育障害のリスクが高くなるとの報告もあります。

論文1:Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a systematic review and meta-analysis

Justin Chu et.al. Human Reproduction, Vol.33, No.1 pp. 65-80, 2018

本論文は、ビタミンD濃度と体外受精成功率との関係についてのレビューとメタアナリシスで、11論文、2700名の女性について研究結果を統合、分析したものです。

25-OH ビタミンD濃度が不十分(20〜30 ng/mL=50~75 nmol/L)あるいは不足(<20 ng/mL=<50~75 nmol/L)の方と比べると、十分(>30 ng/mL=>75nmol/L)な場合には、7論文2026名のデータで出産率が、オッズ比:1.33倍、5論文700名のデータで妊娠反応陽性率が、オッズ比:1.34倍、11論文2700名のデータで臨床的妊娠率がオッズ比:1.46倍と有意に良好な結果となりました。なお、本解析では流産率には有意差は認められませんでした。

この論文では、体外受精を受けている女性の血中ビタミンD濃度は、妊娠率や出産率との間に関連があることを示しています。 ビタミンD不足の治療が、ARTを考慮した女性の治療に重要な条件であり、 この仮説を検証するためには、ビタミンD欠乏治療の利点を調べるための大規模な前方視的検討が必要と結論づけています。

妊娠を望む女性に、ビタミンDはとても重要なものですが、男性にとってはどうでしょう。

論文2:Vitamin D deficiency and low ionized calcium are linked with semen quality and sex steroid levels in infertile men

Martin Blomberg Jensen et.al. Human Reproduction, Vol.31, No.8 pp. 1875-1885, 2016

本論文は、ビタミンD欠乏および低イオン化カルシウムは、不妊症男性の精液の質および性ステロイドレベルと関連しているとの報告です。

2011年〜2014年に1248人の不妊男性の調査結果で、ビタミンDが十分(>75nmol/L=
>30ng/ml)な男性は、ビタミンD欠乏(<25nmol/L=<10ng/ml)の男性に比べて運動精子数が66~110%と有意に増加していました。本論文は男性でもビタミンD欠乏は精液所見の低下をもたらすことを示しています。ビタミンDは精子の運動能力を高め、精子の細胞内へのカルシウム吸収を促すことで精子の受精能力の獲得に関与しています。男性もビタミンD濃度を測定し、不足していれば補充することで精液所見の改善が期待されます。

また、最近、血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクについての報告が国立がん研究センターより発表されました。

論文3:Plasma 25-hydroxyvitamin D concentration and subsequent risk of total and site specific cancers in Japanese population: large case-cohort study within Japan Public Health Center-based Prospective Study cohort
Sanjeev Budhathoki et.al.,BMJ 2018; 360: k671


本論文は、1990年に日本全国から5か所の保健所と1993年に6か所の保健所において、調査を行い、健診などで血液を提供された40~69歳の男女33736人を、2009年まで追跡した結果に基づいて、血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクとの関連を調べた結果で、日本国内での多目的コホート研究となっています。研究開始から2009年までに、3,734人のがん罹患が確認されました。これに対し、同じ33736人の中から、4,456人を無作為に選んで対照グループに設定しました。

血中ビタミンD濃度を4群にわけ、血中ビタミンD濃度が最も低いグループを基準としたところ、血中ビタミンD濃度が2番目に低いグループから何らかのがんに罹患するリスクが統計学的有意に低下し、血中ビタミンD濃度が2番目に高いグループで最もがんに罹患するリスクが低下していました。また、血中ビタミンD濃度が最も低いグループを基準に、最も高いグループのがん罹患リスクを部位別にみたところ、肝がんの罹患リスクが統計学的有意に低下していました。また、最もビタミンD濃度が低いグループと比べ、他のグループは、ほぼ全ての部位においてがん罹患リスクが上昇する傾向は見られませんでした。今回の前向き研究から、血中ビタミンD濃度が上昇すると、全体のがんに罹患するリスクが低下することが示唆されました。


ビタミンDは脂溶性のビタミンの一つで、植物由来のビタミンD2と動物由来のビタミンD3がありますが、ヒトではビタミンD3が、活

性型ビタミンDとして働いています。主な役割は腸からのカルシウムの吸収を促進し、吸収されたカルシウムを骨へ沈着させ、骨の成長や健康に深く関与しています。また、血中のカルシウム濃度を調節する働きもあり、骨への影響の他に、免疫やがん予防、生殖への影響といった多彩な働きをすることがわかってきました。

ビタミンDは、紫外線を浴びることにより体内で合成されます。週に2回、5~30分は日光を浴びること

が推奨されています。また、食品では、魚類(かつお・まぐろ・あんこう、鮭)、キノコ(きくらげ・しいたけ)などに豊富です。
アメリカ内分泌学会では、妊娠中のビタミンD摂取は、37.5μg〜50μg(1500〜2000IU)を推奨しています。一方、2009年の国民健康・栄養調査では、日本人女性の1日平均摂取量は、わずかに7.0μgと報告されています。妊娠率アップ、ご家族の健康のため、ご夫婦でビタミンD摂取をこころがけることも大切です。適正量がありますので、当院では採血でのビタミンD測定検査をお勧めしております。不足や不十分な方には、ビタミンDサプリメントも処方しております。

注意)持続的な過剰摂取は、体調不良(悪心嘔吐、食欲不振)、内蔵へのカルシウム沈着・石灰化の原因となることがあります。

仙台医師部 戸屋 真由美