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KYONO ART CLINIC 京野アートクリニック 仙台

コラム

食生活と女性の生殖能力:「先生、私は何を食べるべきですか?」

 生殖補助技術(ART)は、最近ではテレビや新聞などに取り上げられ、一般的な治療法として選択されるようになってきました。しかし、ARTと付き合っていくうえでは経済的および精神的な課題があります。精神的な課題の例としては、妊活クライシスがあげられます。妊活クライシスとは、妊活に対する認識や意識の食い違いによる夫婦関係の危機のことです。これらの経済的および精神的な課題もとても重要ですが、この論文では、妊娠を意識した食事やライフスタイルに注目をし、食事から摂取できる重要な栄養因子と女性の生殖能力との関係について焦点を当てています。妊娠を希望する女性にとって、食事における最も良いとされる栄養素について紹介していきます。参考程度にお読みいただければと思います。

Diet and female fertility: doctor, what should I eat?
Fertility and Sterility, Vol. 110, Issue 4, p560-569
Published in issue: September 2018
Yu-Han Chiu, Jorge E et al.

 微量栄養素と主要栄養素が生殖能力にどのような影響を与えるかを主にまとめてみました。
 微量栄養素とは、微量ながらも人の発達や代謝機能を適切に維持するために必要な栄養素を意味します(ビタミン、ミネラル)。主要栄養素とは、細胞を構築するための物質やエネルギー産生のための物質を意味します(炭水化物、タンパク質等)。

微量栄養素
○葉酸
 葉酸はDNAの合成に関わっており、配偶子形成、受精、妊娠にとって重要です。したがって、葉酸(天然型のビタミンB9または合成型のビタミンB9)は、人の生殖において重要な役割を果たす可能性があります。未受胎の女性を対象とした試験では、毎日0.4mgの葉酸を含むマルチビタミンを摂取した女性は、プラセボ群の女性より妊娠の確立が16%高いという結果が出ています。別の研究では、妊娠前に0.4mg/d以下の葉酸を摂取していた女性と比較し、0.8mg/d以上の葉酸を摂取していた女性の方が出生確率が高いことも分かりました。また若い女性の調査において、葉酸摂取は、散発性無排卵(生物サイクル研究)の頻度が低く、妊娠に至るまでの期間が短いことと関連していました。


○ビタミンD
 ビタミンDは生殖過程を調節する可能性があることを示唆しています。ビタミンD受容体は、卵巣、子宮、子宮内膜などの生殖器系に広く分布しています。ビタミンDは卵巣ステロイド産生を刺激し、卵胞の成熟を促進し、HOXA10発現を調節し(着床の成功に関与)、その欠乏は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病因に関与している可能性があります。
 ビタミンDを豊富に摂取している女性は、臨床的妊娠や出生確率がより高いことが分かりました。また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者を対象とした試験の事後分析では、血清中に含まれる30ng/mLの25-ヒドロキシビタミンDは低い出生確率と関連していたことも分かりました。さらに、別の2つの試験では、ビタミンD欠乏女性に対しての6〜8週間の50,000 IUのビタミンD補給や、PCOSの女性へのビタミンD(300,000 IU)の大量投与も、生殖転帰を改善しませんでした。後者では、子宮内膜の厚さの有意な増加が認められましたが、有意に高い妊娠の可能性には結びつきませんでした。ビタミンDの過剰摂取は効果的ではない為適量の摂取が肝心です。

主要栄養素
○炭水化物
 食事性炭水化物の質と量の両方がグルコース恒常性とインスリン感受性に影響を与え、それが次に卵巣アンドロゲン産生と卵巣機能に影響を与える可能性があります。看護師健康調査では総炭水化物消費量と血糖負荷の両方が、より高い排卵性不妊のリスクと関連していました。また、いくつかの研究ではPCOSの女性が、正常なアンドロゲン産生を行う女性と比較して、高GI食品を含む食事パターンを示すことが多いと分かりました。PCOS女性における食事性炭水化物の減少は、インスリン感受性を改善し、循環テストステロンレベルを減少させ、排卵機能を増強する可能性があるとの報告もあります。

○脂肪酸
 一般に飽和、一価不飽和、および多価不飽和として分類される脂肪酸は、無数の経路を通じて生殖機能に重要な役割を果たす可能性があります。一つには、卵母細胞の成熟と初期胚発生の間のエネルギー基質として脂肪酸が使われ、それらは着床と妊娠維持に重要な役割を果たすさまざまな基質(例えばプロスタグランジンとステロイドホルモン)の重要な前駆体として働きます。一方、不飽和トランス脂肪酸はインスリン抵抗性を高め、排卵過程に悪影響を及ぼします。

○タンパク質
 最低限の身体活動を伴う健康な成人のための1日当たりの推奨タンパク質許容量は、体重1kgあたり0.8gです。
動物性タンパク質の摂取の影響をみていくと、看護師健康調査の参加者間で肉の摂取量の増加によって排卵に悪影響を及ぼしたことが分かりました。
 大豆は女性の生殖能力に悪影響を及ぼさないようであり、ARTの結果に有益である可能性があることが研究により示唆されています。
 魚介類に関しては、良質なたんぱく質ですが内分泌系に干渉して生殖能力を損なう可能性がある水銀を摂取してしまうため、水銀濃度が最も高い魚類(メバチ、サバ、メカジキ)を避け、妊娠の可能性がある女性は適度な量を摂取することを心がけましょう。

まとめ

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 妊活中の女性は、全粒穀物、オメガ3脂肪酸、魚、大豆やナッツの摂取を増やし、トランス脂肪酸や赤身の肉の摂取を減らすよう奨励されています。 さらに、妊娠前および妊娠中の葉酸を含む毎日のマルチビタミンは、先天性欠損症を予防するだけでなく、妊娠を達成し維持する可能性も改善します。
「不妊対策の食事法」(植物やサプリメントから、鉄や、マルチビタミン、低血糖炭水化物、高脂肪乳製品、植物性タンパク質、一価不飽和脂肪酸の高摂取)の厳守は、排卵性不妊のリスクが低いことが分かりました。一方で、ファストフードの頻度が高く、果物や野菜の摂取頻度が低いほど、妊娠に至るまでの期間が長くなることが報告されています。
必要な栄養素を適切な量を摂取し、食生活を見直してみましょう。

仙台培養部 青木