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コラム

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

20190924_takanawans.jpg体外受精を行っている方や行うか考えている方は、その副作用・合併症としてOHSSという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?今回はそんなOHSSについて紹介したいと思います。

卵巣はだいたい親指ぐらいの大きさと言われており、卵巣の中には原始卵胞と呼ばれる卵子の入った袋が多数存在しています。自然に様子を見ていくと、その中の1つが大きくなり卵胞が18~20mmになると排卵すると言われています。
当院では、年齢や卵巣予備能に応じて、患者さんに最適な卵巣刺激法を提案いたしますが、原則として、注射や内服薬などの排卵誘発剤を使用する卵巣刺激法を行い、卵胞を複数個育てて、一度の採卵で多くの卵子を得る方法を推奨しています。

OHSSは、この卵巣刺激によって起こります。卵巣の中に卵胞が複数育つと卵巣が腫れてきます。さらに排卵を誘発するためのhCGを投与することで黄体化が進み、さらに卵巣が腫大し、お腹が張ってきたり腹痛を生じることがあります。他にも、血管の透過性が亢進すると、血液中の水分が血管外に漏れ出て腹水や胸水がたまり、腹痛や吐き気・呼吸不全となることもあります。
重症化すると、循環血液量が減少して尿量が減少したり、血液が濃縮することで血栓がつくられ、肺や脳などの大切な血管を塞いでしまい、肺塞栓症や脳梗塞など命に関わるような状態を引き起こしてしまうこともあります。
また、OHSSの頻度は、軽症は8~23%、入院を要するほどのものは約0.8~1.5%、危機的状態に陥ったものは10万人あたり0.6~1.2人と報告されています。

このように聞くと、排卵誘発剤を使用しない方がよいのではないか、採卵をすることはとっても怖いことなのではないかと思ってしまう方もいるかもしれませんが、一度の妊娠に必要な卵子は1個ではなく、一度の採卵で複数個の卵子を獲得できることはメリットでもありますので、重症化しないように予防しながら治療を進めていくことが重要となります。

当院では採卵後、血栓を予防するために血液をさらさらにするバファリンという内服薬をお渡ししています。また、状態に応じて腹水や胸水を予防するカバサールや卵胞ホルモンの合成を阻害し血液中の卵胞ホルモン濃度を低下させる働きを持つフェマーラという薬を処方することもあります。
また、血液検査や超音波検査により、血栓のリスクや卵巣の状態、腹水の有無などの確認を行っています。
OHSSのリスクが高いうえでの妊娠は症状を悪化させることにつながるため、同じ周期の移植は避け、全凍結をお勧めすることも多くあります。
予防のためにも水分を摂取すること、また症状があった場合には速やかに連絡して頂くことが重要となります。

安全に安心して妊娠につなげられるようにサポートしていきたいと思いますので、不安なことやお困りのことがあればお気軽にお声掛けください。


                                 
高輪看護部 神原

参考・引用文献

生食医療の必修知識 一般社団法人日本生殖医学会編 2017 
一般社団法人 日本生殖医学会編 コメディカル ARTマニュアル 編集:森崇英 久保春海 高橋克彦