コラム

COLUMN

妊娠初期の超音波検査と経過について

「妊娠初期ってどんな時期?」「今日の診察では何が分かるのかな?」と妊娠してからも無事に出産するまでは不安なことが多いと思います。今回は、妊娠中の症状や超音波検査について紹介したいと思います。

妊娠4

血中hCG値(妊娠すると分泌されるホルモン)を測定し妊娠判定を行います。超音波ではまだはっきりとした所見が見られない時期です。妊娠陽性であれば翌週に胎嚢(赤ちゃんが入る袋)が子宮内にあるかを確認します。

仙台院では妊娠5週、7週、9週に超音波検査を行っています。しかし、hCG値があまり上がらず、妊娠5週の診察で胎嚢が確認できない場合には異所性妊娠の可能性も疑います。慎重に超音波検査を行うため、来院週数を状況に応じて変えることがあります。

妊娠5

血中hCGが順調に上がってきているかを確認します。超音波上では、胎嚢が見え始める時期になります。また、赤ちゃんに栄養をあげるための卵黄嚢(白いリング状)や胎芽(赤ちゃん)が見えることもあります。

★子どもの成長と同じで胎芽の発育には個人差があります。また、この頃から中枢神経系、心臓形成を開始していく大事な時期に入ります。薬剤や放射線、高血糖、風疹などにより奇形のリスクが上昇しやすいので注意が必要です。

妊娠7

胎嚢の大きさ、胎芽の大きさ、心拍の状態から成長を確認していきます。子宮の中では胎盤を形成し始めています。血流が豊富になっているため、出血が起こりやすくなります。

★この時期の子宮内膜はとても繊細なため、何度も診察をしてしまうと、刺激によって出血が増えてしまう可能性があります。そのため、少量の出血や軽度の腹痛であれば安静にして様子をみます。月経2日目くらいの出血や強い腹痛があればご相談ください。

★心拍が見えれば分娩希望先を確認します。あらかじめ検討しておきましょう。

妊娠9

胎嚢の大きさ、胎児の大きさ、心拍の状態を確認します。頭部、体幹、四肢が分かるようになり、診察のタイミングによっては、動く様子や臍帯が見えることもあります。

8週未満を胎芽といいますが、8週以降から胎児とよんでいます。

★順調に成長が確認できれば、分娩希望先に紹介をします。黄体補充は指示通りに継続していただき、10週以降は分娩希望先の病院で診察をうけるようになります。


週数はあくまで目安であり、成長過程は大きな個人差があります。

妊娠初期は妊娠の実感が薄いかもしれません。しかし、胎児にとっては急速に成長し器官が形成されていく重要な時期です。また、母体の葉酸不足は二分脊椎という先天奇形を起こすリスクが高まる要因になります。そのため妊娠前からの葉酸摂取も推奨されています。サプリメントを希望される際にはご相談ください。当院以外で処方されている薬がある、検査などの予定がある場合には当院だけでなく、かかりつけの医療機関にも妊娠の可能性を伝えておきましょう。

つわり症状がひどい場合や出血が続いており医師の指示において自宅安静が必要な場合には、診断書や母体健康管理指導連絡管理カードを書くこともできます。母体健康管理指導連絡カードは、働く女性が事業主に対し医師の指示事項を伝達するためのツールになっています。自覚がなくても体に負担がかかっていることもあるので、無理せずゆったりと過ごすよう心掛けてください。

妊娠して治療終了ではなく、出産までが重要な過程です。安心して妊娠初期を過ごせるようサポートしますので、不明点や心配な点があればご相談ください。

京野アートクリニック仙台

看護部 冨樫英里

参考資料・参考文献

*岡庭豊(2017)「病気がみえる vol.10 産科」[第3版]メディックメディア

*長谷川純一「産科一般超音波検査・初期偏」日本産婦人科医会 産婦人科ゼミナール

http://www.jaog.or.jp/learning/ (最終閲覧日:2021314日)

*厚生労働省委託 母性健康管理サイト「母健連絡カード」(母性健康管理指導連絡カード)について

http://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/renraku_card/ (最終閲覧日:2021314日)