コラム

COLUMN

第11回日本がん・生殖医療学会③

2月12日から、第11回日本がん・生殖医療学会が開催されています。
当院からは4名が演題を採択されています。
どのような内容か、簡単ではありますが、紹介させていただきます。

④当院におけるHBOC患者への妊孕性温存について(生殖医療相談士 越智将航)

HBOCとは遺伝性乳がん卵巣がん症候群のことを指します。
少し前になりますが、女優のアンジェリーナジョリーさんが自身のHBOCを公表し、両方の乳房および卵管・卵巣を予防切除したことが報道されたことを覚えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

人の遺伝子には、BRCA1、BRCA2というタンパク質を作る遺伝子があり、先天的にそのいずれかに変異がある場合に、HBOCと診断されます。BRCA1/2の遺伝子変異が陽性であった場合、様々なリスクが上昇することで知られています。

HBOCの場合の発がんリスク
図:HBOCの場合の発がんリスク

具体的には、上の図のように、一生涯での乳がん発症リスク、対側乳房(既に乳がんが発症した胸とは反対側の胸)への発症リスク、卵巣がんの発症リスクが高くなります。また、この遺伝子変異は性別を問わず、親から子供へ50%の確率で受け継がれます。

そのため、通常の乳がんの患者さんよりも検討すべき事項が多岐に渡ります。
また、これは当院に多い傾向かもしれませんが、Triple Negativeなど進行の早い乳がんであることが多いため、短時間で意思決定をすすめていかなければいけません。

当院では、HBOC患者さまへの妊孕性温存は受精卵凍結、卵子凍結を第一選択とすべきと考えております。

今後は益々こうしたケースも増えてくると思いますが、しっかりと患者さんに寄り添い、
良い意思決定支援ができるように努力してまいります。