がん患者生殖機能温存治療費助成金制度について
今回は小児・AYA世代のがん患者さまの妊孕性温存の治療にかかわる助成制度についてお話します。
※小児・AYA世代:小児は15歳未満、AYA世代は思春期・若年成人(Adolescents and Young Adults)といい、15~39歳の方を指します。
〇妊孕性・妊孕性温存療法について
妊娠するために必要な能力を指す「妊孕性」はがんを治すために必要な手術や抗がん剤・放射線治療などのがん治療による影響を受け、将来妊娠できなくなる可能性があります。
そして、治療後に妊娠できる可能性を残し安心して治療に臨むため、これから治療を受けられるがん患者さまの妊孕性を守るためにがん治療の前に行う治療のことを妊孕性温存療法といいます。具体的に卵子や精子などの配偶子・卵巣組織や精巣組織、胚(受精卵)などの生殖細胞を体外に取り出し凍結保存を行います。
〇宮城県がん・生殖医療ネットワークについて
宮城県がん・生殖医療ネットワークとは、がん治療を行う施設や生殖医療施設が連携し、妊孕性温存が必要ながん患者さまに治療についての正確な情報提供、がん治療や妊孕性温存を迅速に行えるために設立した東北で唯一のがん・生殖医療ネットワークです。
利用する施設の順番は原疾患治療施設→コーディネーター施設(東北大学病院婦人科または宮城県立がんセンター婦人科)→生殖医療施設です。
基本的な利用の流れは原疾患治療施設でがん・生殖医療についての相談をしたうえでコーディネーター施設でカウンセリングを行っていただきます。カウンセリングで妊孕性温存の適応があると判断された場合は生殖医療施設で妊孕性温存治療を実施します。
当院はこの中で生殖医療施設に該当しております。
〇がん患者生殖機能温存治療費助成金制度について
がん患者生殖機能温存治療費助成金制度とは、小児・AYA世代のがん患者さまが将来に希望を持ってがん治療に臨むため、がん治療の際に行う妊孕性温存治療の費用を一部助成する制度です。
この制度は令和3年4月より一部内容を改定し、助成上限額や助成上限回数などが拡充されました。
【助成の対象】
- 「小児,思春期・若年がん患者の生殖機能温存に関する診療ガイドライン(一般社団法人 日本癌治療学会編)」に基づき、がん治療により生殖機能が低下する又は失うおそれがあると医師に診断された方
- 同一期間分の特定不妊治療費助成事業に基づく助成を受けていない方
※対象となる条件や必要な書類、申請方法など、自治体により異なる場合もあるためお住まいの自治体にご確認をお願いいたします。
対象治療 |
助成金額/上限額 |
対象年齢 |
助成回数 |
申請期限 |
胚(受精卵)凍結 |
治療費の2分の1 (上限35万円) |
43歳未満 (凍結保存時) |
1人につき 2回まで |
治療実施日が 属する年度内 |
卵子凍結 |
治療費の2分の1 (上限20万円) |
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卵巣組織凍結 |
治療費の2分の1 (上限40万円) |
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精子凍結 |
治療費の2分の1 (上限3万円) |
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精巣内精子凍結 |
治療費の2分の1 (上限35万円) |
【当院での書類の申請について】
宮城県のWebサイトより様式第5号:宮城県がん患者生殖機能温存治療実施証明書(生殖機能温存治療医療機関が記入)をダウンロードしていただき、当院の受付窓口へお申し込みください。(別途で発行料金がかかります)
作成にお時間をいただきますのでその他に必要な書類のご用意をお願いいたします。
詳しい申請方法につきましては宮城県のWebサイトをご覧ください。
※当院では領収書・明細書の再発行は出来かねます。申請に必要な書類ですので紛失されないようにお願いいたします。
京野アートクリニック仙台
受付部 内山 結愛
引用・参考文献
- 宮城県【小児・AYA世代のがん患者さんの生殖機能温存治療費用を助成します。~宮城県がん患者生殖機能温存治療費助成事業~】
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/kensui/aya-seisyoku.html
- がん治療と妊娠 地域医療連携
- 宮城県がん・生殖医療ネットワーク