銅と亜鉛の関係
妊娠に大きくかかわってくるのは、受精卵と受精卵が着床する子宮内の環境です。
当院では2回以上良好胚を移植してもうまくいかない方(反復着床不全)や繰り返し流産されている方には子宮内環境の検査(着床不全検査、不育検査)をおすすめしておりますが、当院で行っている着床不全検査の1つに”銅亜鉛検査”があります。
今回は銅と亜鉛がなぜ不妊につながるのかをご説明します。
銅(Cu)と亜鉛(Zn)の作用
まずは銅と亜鉛がそれぞれの体内でどのような働きをしているのかご説明します。
・銅(Cu)
銅は生命活動に必要不可欠なミネラルで体内の骨、筋肉、肝臓に存在しています。エネルギーの産生、骨の形成やヘモグロビンの合成に関与します。銅が不足すると貧血や白血球数の減少、骨粗鬆症につながります。
・亜鉛(Zn)
皮膚や粘膜の健康維持を助け、たんぱく質・核酸の代謝に関与します。亜鉛が不足すると、嗅覚障害や味覚障害を起こすこともあります。そのほかにも免疫力の低下、爪・皮膚の異常につながります。亜鉛は体内で作り出すことができないため食事から摂取する必要があります。
銅と亜鉛の関係
体内の銅濃度が高い方は、子宮内膜に銅が付着することにより着床しづらいとの報告があります。亜鉛は血中銅濃度を下げる効果があり、着床しやすい子宮環境に貢献すると考えられています。そのほかにも受精卵の分割を促す作用があります。
男性の場合は亜鉛が不足すると男性ホルモン(テストステロン)の合成や分泌の低下、さらに精液中の亜鉛濃度が低いと精子形成が低下すると言われています。
◎日常生活で気を付けること
日常生活で注意していただきたいのが食事です。日本人の食事は銅の摂取が多く、亜鉛が吸収されにくいため、銅過剰、亜鉛不足になる方が多い傾向にあります。亜鉛摂取を増やし、銅を摂り過ぎないような食生活を心がけましょう。
〈亜鉛が多く含まれる食材〉
牡蠣・豚肉(レバー)・牛肉(赤身)・さんま・小麦胚芽・油揚げ・高野豆腐・卵など
〈銅が多く含まれる食材〉
牛肉(レバー)・いか・かに・えび・カシューナッツ・納豆・ココアなど
ご紹介した食材は一部ですが、亜鉛ばかりを摂取し銅が低下すると貧血や骨異常につながってしまうため、偏った食生活はせずにバランス良く摂取していきましょう。
亜鉛摂取時の注意点
当院での検査により亜鉛低値が見つかり、食生活でも改善がみられない場合、サプリメントで亜鉛を摂取していただくことがあります。亜鉛のサプリメント内服時にご注意いただきたい飲み合わせが悪い成分をご紹介します。
・カルシウム(Ca)/鉄(Fe)
過剰摂取した際に、亜鉛の体内での吸収を阻害する可能性があります。
・ビスホスホネート
骨粗鬆症治療薬のビスホスホネート製剤は、ミネラル類と併用すると吸収を阻害されてしまいます。
・抗生剤(ビブラマイシン/クラビット/セフゾン/ミノマイシン/トロミンなど)
抗生剤との併用で、亜鉛の吸収が阻害されてしまいます。内服時はご相談ください。
京野アートクリニック仙台 看護部 髙橋優
参考文献・資料
・亜鉛欠乏症の診療指針2018 – 日本臨床栄養学会
・厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/index.html
銅(Cu) https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4aj.pdf
亜鉛(Zn) https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4ai.pdf