コラム

COLUMN

Shortening time to pregnancyを目指した着床不全検査の最適化

仙台院院長の五十嵐秀樹です。

先日開催された第40回受精着床学会にて「保険診療におけるShortening time to pregnancy」というシンポジウムが執り行われました。当シンポジウムで私は「Shortening time to pregnancyを目指した着床不全検査の最適化」というタイトルで発表させて頂きました。

つまり、できるだけ早い妊娠・出産を目指した着床不全検査の進め方です。生殖補助医療の保険診療化に伴い患者様の経済的負担が軽減される一方、これまでの自由診療(自費診療)で行われていた検査、治療が自由に行えないというジレンマも生じています。着床不全検査・対策・治療は保険診療で実施できるもの、先進医療として実施できるもの(特例として保険診療と同時に実施可能な保険適応外検査など)、自由診療でしか実施できないものに分けられます(着床不全検査の詳細については反復着床不全のページをご覧下さい)。

保険診療・先進医療で実施可能な着床不全対策の画像

このため着床不全検査とその対策においては少なからず影響が出ており、それを解決すべくシンポジウムで提言をさせて頂きました。

今回の生殖補助医療保険適応でポイントとなる点は治療回数が胚移植回数となる点です。

  • 40歳未満は通算6回まで(1子ごと。2022年4月2日〜9月30日に40歳の誕生日を迎える方は6回までの特例措置あり)
  • 40歳以上43歳未満は通算3回まで(1子ごと。9月30日までに43歳になる方は1回までの特例措置あり)

つまり、40歳以上43歳未満の方は初めて保険診療で生殖補助医療を行った場合、着床不全の診断がつく頃には保険適応回数が終了していることとなります。

また、一部の着床不全検査は現時点で保険診療下では実施できません。例えば、慢性子宮内膜炎の診断に広く用いられているCD138陽性形質細胞検出、免疫異常(Th1/Th2比、NK細胞活性など)、子宮鏡検査(一部は保険診療で可能)の検査がそれに当たります。混合診療禁止の観点から保険診療開始(生殖医療管理料算定)以降は自費診療を併施することは出来ず、一部の方には充分な着床不全検査が出来ない恐れがあります。以上のことから年齢、これまでの生殖補助医療治療歴、妊娠歴から個別に着床不全検査の実施時期を考える必要があります。

 40歳未満、40歳以上43歳未満ではそれぞれこの様に着床不全検査実施のタイミングを提案させて頂きました(注:ARTはAssisted Reproductive Technology=生殖補助医療の略)。

保険診療でのShortening time to pregnancy を目指した戦略(40歳未満(
保険診療でのShortening time to pregnancy を目指した戦略(40歳~42歳)

通常は胚移植回数が増える毎に妊娠率が低下していきますが、当院ではこの様に個別に早めの着床不全検査・対策を講じることで40歳未満、40歳〜42歳の方の1〜4回までの胚移植当たり妊娠率が変わりません。発表後に「着床不全検査の時期の重要さが分かりました」との言葉を多く頂きました。保険診療科下では医療者側、治療を受ける側も着床不全検査の重要さを認識し、「Shortening time to pregnancy」を目指して行くべきです。

京野アートクリニック仙台

院長 五十嵐秀樹

関連リンク

京野アートクリニック高輪「反復着床不全」

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