コラム

COLUMN

子宮内膜の厚さと妊娠率の関係について

今回は子宮内膜の厚さと妊娠率の関係について調べた論文をご紹介します。
体外受精において、一般的に子宮内膜が厚いと着床しやすく、子宮内膜の厚さは誘発方法(卵をたくさん育てるために行うもの)に密接に関係しているとされてきました。
誘発方法は様々な種類があり、それぞれにメリット、デメリットが存在します。子宮内膜の厚さが妊娠率に大きく影響を及ぼすのであれば、誘発方法の選択が大変重要になってきます。
先行研究では、主に体外受精における子宮内膜の厚さと妊娠率の関連性について議論されてきましたが、AIHでの報告は多くありません。AIHにおいて、子宮内膜の厚さは妊娠率にどのような影響を与えるのでしょうか。

実験方法

参加者はゴナドトロピン(301 人)、クロミフェン(300 人)、またはレトロゾール(299 人)により卵巣を刺激、誘発し、AIHを行いました。超音波検査により子宮内膜の厚さを計測し、妊娠率との間に関連はあるのか調べました。

「子宮内膜の厚さは妊娠に影響するの?」のイラスト

結果と考察

AIHでの生児出生率は子宮内膜が厚いほど増加しました。では、子宮内膜が薄い場合その周期の治療をキャンセルするべきでしょうか。下のグラフをみると5mm以下の子宮内膜でも妊娠していることがわかります。また、誘発方法について調整し、層別解析をすると、子宮内膜の厚さと妊娠率との間に有意な関連はないことが分かりました。子宮内膜の厚さは考慮するべきですが、着床はそれ以外の因子にも左右される可能性があるため、薄い内膜でのキャンセルは必ずしも必要でありません。

各卵巣刺激法および子宮内膜の厚さにおける妊娠率のグラフ

誘発法にはそれぞれメリットデメリットが存在しますので、自分にあった誘発法を選択することがとても重要です。
当クリニックでは、内膜への影響を考慮しつつ一人一人にあった誘発法をご提案いたします。

京野アートクリニック仙台
培養部 蝦名由璃子

参考文献

Alexander M Quaas,et al. “Endometrial thickness following ovarian stimulation with gonadotropin, clomiphene, or letrozole for unexplained infertility, and association with treatment outcomes”Fertil Steril. 2021 January ; 115(1): 213–220.