凍結時の胚盤胞の大きさは妊娠率に影響するのか
2022年11月3日、4日に開催された第67回生殖医学会に参加してきました。
今回は、私が発表した「凍結時の胚盤胞直径が凍結融解胚移植の臨床成績に与える影響」についてご紹介します。
胚盤胞移植を行うにあたり大事なことは、妊娠する確率が高い胚を選択することです。胚盤胞の評価方法には、形態的評価やiDAScoreTM(AIによりスコアリングされた評価)などさまざまありますが、そのなかでも今回は凍結した時期と胚盤胞の直径に注目しました。
当院では、胚盤胞凍結を希望される場合、基本的に培養5日目、6日目に胚盤胞まで発育が確認できた胚を凍結保存しています。しかし複数個の胚盤胞を凍結できた場合、それぞれ凍結した時期や、凍結する直前の胚の大きさはバラバラです。
そこで、凍結した時期を培養5日目の午前、培養5日目の午後、培養6日目にわけ、それぞれのタイミングでさらに150~174μm、175~199μm、200μm以上の3つの大きさのグループに分けて、妊娠率を比較しました。
その結果、培養5日目午前と培養5日目午後では、胚盤胞の大きさが大きい方の妊娠率が高いという結果になりました。しかし、培養6日目では大きさによる妊娠率に差はありませんでした。流産率では、培養5日目、培養6日目ともに、大きさによる差はありませんでした。
さらに、培養5日目の午前と午後の間で比べると、午前中に凍結した小さい胚盤胞よりも、午後に凍結した大きい胚盤胞の妊娠率が高いという結果になりました。
胚盤胞になったからと言って、すぐに凍結するのではなく、ある程度の大きさに達した後に凍結することで、より妊娠率の高い胚盤胞を得られるということになります。
しかし今回は、胚盤胞の(4AAや4BBといった)グレードによる形態的な評価を加味しておらず、あくまで大きさだけで比較した結果になります。妊娠率には胚盤胞のグレードなども大きく関わってくるため、今回お話しした胚盤胞の大きさは、移植胚を選択するための参考の一つにしていただければと思います。
京野アートクリニック仙台
培養部 高橋瑞穂