用語マニュアル

TERMINOLOGY

あ行

一般不妊治療

夫婦生活のタイミング指導、排卵誘発、人工授精、その他薬物療法で行う治療のことで体外受精や顕微授精などの高度な治療に入る前の治療のことです。

インフォームドコンセント

説明と同意。医師からの十分な説明を受け、納得したうえで治療をすすめていくことをいいます。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)

AMHとは、卵巣の中の前胞状卵胞(発育過程にある小卵胞)から分泌されるホルモンで、女性の卵巣年齢を知る指標になるものです。

AMHは年齢上昇とともに低下し、体外受精では、AMHが低下すると採卵数、受精卵数、妊娠率が低下します。月経中のFSH(卵胞刺激ホルモン)でも卵巣機能の評価は可能ですが、FSHは月経周期や薬剤による変動が大きく、正確に卵巣年齢を評価することは困難です。

AMHは、月経周期や薬剤による影響をほとんど受けずに、卵巣年齢を正確に評価することができるという特長があります。

か行

カウフマン療法(K)

正常月経周期の性ホルモン状態に似た環境を作り、周期的に生理を起こさせる治療のことで、卵胞ホルモン(エストロゲン)投与に続いて卵胞ホルモンと黄体ホルモンの双方を投与します。子宮内膜を整え卵巣機能や卵胞の発育を良くすることもあります。

基礎体温(Basal Body Temperature: BBT)

基礎体温は朝、起床する前に床の中で婦人体温計を舌の下に入れて測定します。これを毎日チェックし、表にしたものが基礎体温です。
排卵日の予測や黄体機能不全の有無を知ることができます。正常の場合、高温相(黄体期)と低温相(卵胞期)の2相性を示します。

  • 卵胞期
    月経開始から排卵までの時期のことをいい、低温相を示します。
  • 黄体期
    排卵から次の月経までのことをいい、高温相を示します。

顕微授精:卵細胞質内精子注入法(Intracytoplasmic Sperm Injection: ICSI)

顕微鏡下で髪の毛より細いガラス管を使って、1個の卵子の中に1個の精子を直接注入する方法です。
体外受精で受精しない場合や、男性不妊で体外受精では受精が難しい場合に行う方法です。
精液中に精子が少ない場合でも受精・妊娠させることが可能です。

抗精子抗体

精子に対して一種のアレルギー反応を起こして、精子を動かなくしてしまう抗体のことです。抗精子抗体が陽性の場合は、体外受精(顕微授精)の適応となります。

高プロラクチン血症

血液中のプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の濃度が高い状態のことです。
排卵が遅れる・黄体機能不全が起きる・卵の質が悪くなる・着床を妨げるといった症状が現れ、妊娠が成立しにくくなります。
薬物療法による治療を行います。

さ行

採卵

体外受精や顕微授精の際に卵を採取することをいいます。経超音波下で十分に発育した卵胞に針を刺し、卵胞の中の卵胞液と卵子を吸引して行います。

子宮外妊娠

子宮内腔以外のところに受精卵が着床してしまうことで、成長する胎児を支えるだけのスペースや栄養補給などの条件が整っていない為、妊娠継続は不可能となります。手術が必要になる場合もあります。

子宮筋腫

子宮筋肉から発生した良性腫瘍を子宮筋腫といいます。発生場所が子宮内膜に近い場合には着床障害や流産の原因になることがあります。

子宮内膜症(チョコレートのう胞)

経痛や性交痛を訴える場合に疑われます。不妊の原因になる場合もあります。

受精

卵子が精子と一緒になって、母親の遺伝子と父親の遺伝子が融合することです。受精した卵子を受精卵(胚)といいます。

受精障害

精子の数が少ない、運動率が悪い、先体反応が起こらない場合などが原因となり、受精がうまくいかないことをいいます。顕微授精の適応となります。

人工授精

排卵の時期に合わせて調整した精子を直接子宮腔内に注入する方法のことです。フーナーテスト不良や、精子の少ない人、運動率が悪い人、原因不明の人などが適応になります。

  • 配偶者間人工授精(AIH)
    夫の精子を使用する
  • 非配偶者間人工授精(AID)
    精子提供者(夫以外)の精子を使用する

精液検査

男性に対して行われる検査で、精液量、精子数、運動率、奇形率などを調べる検査です。現在、不妊の原因は男女共に1:1といわれている為、男性の検査も重要となっています。3〜4日間の禁欲期間が望ましいと考えています。

  • 精子無力症
    精子の運動率が、40%未満の状態をいいます。
  • 乏精子症
    精子の数が精液1ml中に1,500万未満の状態のことをいいます。
  • 無精子症
    精液中に精子が存在しないことををいいます。精子が作られていない場合と射精されるまでの過程で精子が輸送されていない場合があります。
  • 非閉塞無精子症
    精子の通り路は通っているが、精巣内の精子をつくる造精機能に何らかの問題があり、精液中に精子が認められていない状態のことをいいます。原因は不明ですが、一部にはクラインフェルター症候群などの染色体異常の人に見られます。
    クラインフェルター症候群は男性1000人に1人の割合で存在するといわれています。
  • 閉塞性無精子症
    精巣には精子をつくる造精機能はあるが、精巣からの精子の通路が閉塞している状態のことをいいます。原因には、生まれつき精管が欠損している、精管欠損症や避妊のパイプカット(精管の結紮)の後、ソケイヘルニアの手術にて精管が閉塞している、両側精巣上体炎などがあげられます。

精索静脈瘤

精子を運ぶ管である精管の周りの静脈が拡張し、瘤恐紮(こぶ)のような状態になる病気で精巣からの血液の流れが障害されると同時に、静脈を逆流した有害物質が精巣に運ばれ、精子をつくる能力が悪化します。左側の精巣に比較的多く起こります。

生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology: ART)

体外受精や顕微授精などの高度な技術を必要とする不妊治療のことです。女性の卵巣から卵子を体外に取り出し、男性の精子と受精させ、卵管の環境に近い培養液の中で培養します。その後に女性の体内(主に子宮腔内)に受精卵を戻す治療のことです。

精巣内精子回収法(Testicular Sperm Extraction: TESE)

無精子症の場合に行われる外科的手術で、精巣組織を一部回収し、その中から精子を探し出し顕微授精に用います。

早期卵巣機能不全(Premature Ovarian Failure: POF)

40才以前に卵胞が消失し閉経してしまうことです。ホルモン検査にて血中LH・FSHが高値となります。

た行

体外受精(In Vitor Fertilization: IVF)

女性から卵子を採取(採卵)し、精子と合わせ受精させることです。両側卵管閉塞、重度の子宮内膜症、男性不妊、免疫性不妊(抗精子抗体強陽性など)の場合に行われます。

タイミング指導(療法)

基礎体温、超音波による卵胞径の計測、血中や尿中のLH値などにより、排卵を予測して、性交のタイミングを指導する方法のことです。

多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic Ovarian Syndrome: PCOS)

多数の卵胞が存在するにもかかわらず、それ以上の卵胞の成熟が起こらず、排卵に至らない障害(排卵障害)のことです。卵巣は鶏卵大に腫大し、特徴としてFSHに比べLHが高値となります。また、男性ホルモン(テストステロン)の分泌が高まります。超音波断層では、小さなネックレスのように多数確認することができます。

男性不妊

男性側に不妊症の原因がある場合のことです。

着床

受精卵は、細胞分裂を繰り返して胚盤胞となり、子宮内膜に進入します。こうして胚と母体の間に生物的な結合が成立した状態を着床といいます。

超音波検査(エコー)

周波数の高い音波を臓器に発信してその反射派をコンピューターで映像化する医療機器を使って調べる検査のことです。不妊治療においては一般に膣の方から超音波(経膣超音波検査)を行い、卵胞の発育、子宮内膜の状態などを検察しています。月経中でも行います。

凍結保存

体外受精や顕微授精によってできた受精卵を液体窒素の中で凍結し保存する方法のことです。胚移植後の余剰卵の有効利用や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の予防、着床率、妊娠率の向上などに利用されています。

透明帯開口法(Assisted Hatching: AHA)

胚移植前に胚の透明帯(周りを覆っている殻の部分)を開口したり、薄くしたり透明帯からの脱出を助けて、着床率を上げようという試みです。良い受精卵を何回胚移植しても着床しない場合、または凍結胚移植の場合に行います。

な行

は行

胚移植(Embryo Transfer: ET)

体外受精や顕微授精によってできた受精卵(胚)を子宮に戻すことです。

胚盤胞移植(Blastocyst Transfer)

体外受精や顕微授精の後に受精卵を5〜6日培養し、着床直前の段階(胚盤胞)まで発生したことを確認してから胚移植を行う方法です。
採卵後培養した2〜3日目の形態良好胚を何度戻しても妊娠しない場合に、最終段階まで胚が発生するかを確認し、さらに子宮内膜と胚の発育段階を合わせ、着床環境を整える目的で行われます。

胚盤胞(Blastocyst)

受精してから5〜6日目の受精卵では、この状態になっているのが理想とされています。この時期になると、将来胎児になる細胞群と胎盤になる細胞塊にわかれています。

排卵障害

卵胞がうまく発育しなかったり、卵胞成熟を見るも卵胞破裂が起こらず、卵子を含んだまま(排卵しないまま)黄体形成が起きたりすることをいいます。

排卵誘発剤

排卵を促す薬のことです。注射薬にはhMG、hCG、経口薬にはクロミフェン、セキソビッドなどがあります。誘発剤の作用によって、卵巣が腫れる、腹水がたまるなどの副作用(OHSS)もあるので、医師の指示に従うことが必要です。

不育症

妊娠はするものの胎児が育たず、流産や早産を繰り返し生児が得られない場合をいいます。出生後1週間以内に死亡する周産期死亡も不育症に含まれます。

不妊症

生殖年齢の男女が妊娠を希望して、一定期間性生活を行っているにもかかわらず、妊娠しない場合をいいます。一定期間については、1年というのが一般的です。

  • 原発性不妊症
    今までに一度も妊娠した経験のない不妊症のことです。
  • 続発性不妊症
    妊娠既往はあるものの、その後妊娠に至らない不妊症のことです。

フーナーテスト(性交後検査)

夫婦間適合性検査で、排卵直前に夫婦生活を持ち、性交後3〜5時間くらいで、頸管粘液中に精子が存在するか、また運動しているか調べる検査のことをいいます。

ホルモン

  • 黄体化ホルモン(LH)
    卵胞の成熟・排卵・黄体形成を促すホルモンのことで、脳下垂体から分泌され、卵胞刺激ホルモン(FSH)と協力して働きます。排卵の直接的な引き金となるホルモンのことです。月経中に測定します。
  • 黄体ホルモン(プロゲステロン:P)
    排卵後に卵胞は黄体と呼ばれるものに変化します。この黄体から分泌されるホルモンのことで、基礎体温を上昇させたり受精卵を着床しやすくさせたりする働きをします。高温期に測定します。
  • 卵胞ホルモン(エストロゲン:E)
    卵胞周囲から分泌されるホルモンで子宮内膜を厚くし、頸管粘液を分泌する働きなどがあります。月経中、高温期に測定します。
  • 卵胞刺激ホルモン(FSH)
    脳下垂体から分泌されるホルモンで、卵巣に働きかけて卵胞の発育を促します。また少量の黄体化ホルモン(LH)とともに卵胞ホルモンの分泌も促します。月経中に測定します。
  • プロラクチン(PRL)
    乳汁の分泌を促進させる為のホルモンです。このホルモンが高いと月経不順や排卵障害を引き起こします(高プロラクチン血症)
  • テストステロン(T)
    男性ホルモンです。

ま行

未成熟体外培養法(In Vitro Maturation :IVM)

卵巣刺激を行わずに、未成熟の卵子を採取し体外で成熟させる方法のことをいいます。多嚢卵巣症候群(PCOS)が良い適応とされています。

無精子症

無精子症については「精液検査」を参照ください。

免疫性不妊

女性、男性どちらか一方、もしくは両方が有する異常抗体によって、精子の運動性受精能力が障害されたり卵子の発育が悪くなったりすることもあります。抗体が不妊に関与している場合を免疫性不妊と呼び、抗精子抗体などがそれにあたります。

ら行

卵管疎通性検査

卵管の通りをみる検査で、子宮卵管造影(HSG)などがあります。子宮卵管造影では子宮腔や卵管の形状、卵管采の癒着の程度を知ることができます。

卵巣過剰刺激症候群(Ovarian Hyperstimulation Syndrome: OHSS)

排卵誘発剤によっておこる副作用のひとつです。たくさんの卵胞ができることにより、卵巣腫大、腹水貯留、乏尿、血液濃縮、血栓などがおきます。重症になると入院が必要になります。また妊娠すると重症化しやすくなります。

卵巣刺激

体外受精を受ける際、内服薬(セロフェン、クロミッド、セキソビットなど)あるいは注射(HMG、FSHなど)の排卵誘発剤により卵巣を刺激することで多数の卵子を採取し受精させた後、質の良い受精卵を選択して胚移植することにより妊娠率が高くなると考えられていますが、ここで排卵誘発剤により卵巣を刺激することを卵巣刺激といいます。

排卵障害がある場合に排卵誘発剤を使う場合も卵巣刺激と表現します。この場合は必ずしも多数の卵子(卵胞)が育つとは限りませんが、自然周期と異なったホルモン環境を作ることにより妊娠を目指します。

卵胞

卵巣内にある卵子の入っている袋のことをいいます。中は卵胞液と呼ばれる液で満たされています。排卵前には直径20mm程度の大きさにまで成長します。

流産

妊娠22週未満で、妊娠の継続が終結することをいいます。

  • 稽留流産
    胎のう(胎児の袋)は存在するが、胎児心拍がない状態で、出血などの症状が無くてもすでに妊娠が中断している状態のことをいいます。
  • 切迫流産
    下腹部痛、出血などの流産の兆候があるけれど妊娠が継続している状態で出産の可能性があるもののことをいいます。
  • 反復流産
    2回続けて流産することをいいます。
  • 習慣性流産
    3回以上続けて流産することをいいます。