PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)について

PGT-A・PGT-SRは新見解での実施に変更となります(2022年9月より)

当院は日本産婦人科学会主導で開始された「PGT-Aの特別臨床研究」の実施医療機関として認定され20204月より参加しています。この研究は202291日より新しい見解となり、「不妊症および不育症を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)」と「不妊症および不育症を対象とした着床前胚染色体構造異常検査(PGT-SR)」に区分されました。 ※ PGT-SRについてはこちらをご覧下さい

PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)について

体外受精により胚を移植しても着床しないことや、妊娠しても流産となることはよくあります。その原因のひとつに胚の染色体数的異常(異数性)があります。PGT-Aは移植する前の胚の中から、染色体数の正しい胚(正倍数性)を選択することにより、移植回数を減らし、妊娠率を高め、流産率を低減することを目的としています。

染色体の異数性とは

精子や卵子は親の遺伝情報の半分を持ち、23本の染色体に組み込まれています。受精卵(胚)は23本の染色体を2セット持つ46本となり、正倍数体(euploid)と呼ばれます。これに対し異数体(aneuploid)は、精子や卵子のもつ染色体の数に過不足が生じ、結果として45本や47本など染色体の数に異常がある受精卵(胚)となります。染色体の一部が3本となる場合をトリソミー、1本となる場合をモノソミーと呼びます。異数体の中でも13トリソミー・18トリソミー・21トリソミーはわずかながら出生することも可能です。しかし、大部分のトリソミーは妊娠が成立しても流産や死産となり、多くのモノソミーは臨床的妊娠が認められる以前に消失していることが考えられます。

胚盤胞の異数体と女性年齢との関係

流産胎児の約50%に見られる異数体は、ほとんどがトリソミーです。しかし、胚盤胞から見つかる異数体は、トリソミーとモノソミーがほぼ同じくらいの割合で見つかります。これまでは、胚盤胞の形態から判断し移植していましたので、着床しない胚の中にはモノソミーの胚が含まれていた可能性も考えられます。さらに、胚盤胞の異数体は、女性の年齢上昇に伴い増加する傾向があります。  width=

PGT-Aの方法

まず体外受精による受精卵(胚)が胚盤胞に発育するまで培養します。胚盤胞は100120細胞からなり、胎児に発育する内部細胞塊(ICM)と胎盤になる栄養外胚葉(TE)に分かれます。検査に使用する細胞は、胎盤になるTE細胞を510細胞採取(生検)します。これは胚盤胞全体の10%以下に相当することから、胚へのダメージも少ないと考えられています。生検した510細胞はチューブに移し、国内の検査センターに移送しNGSで解析されています。生検された胚盤胞は当院の培養室に凍結保存されます。 上記が一般的なPGT-Aの検査方法ですが当院では最新の解析技術を導入し、通常のPGT-A解析に加え、「倍数性」も検査することができるため、一倍体や三倍体といった異常を検出することが可能です。

PGT-Aの結果の解釈

PGT-Aの結果は下図のようなグラフで示されます。縦軸に染色体のコピー数、横軸は染色体番号が1番から22番、XYと染色体を横に倒した状態でならんでいます。2番のようにすべての領域が3.0のラインに並ぶと3本あるトリソミーと判断し、5番のようにすべての領域が1.0のラインに下がると1本であるモノソミーと判断します。また、6番のように一部分の重複や、8番のように一部分が欠失する部分的な異常(Segmental aneuploidy)もある程度の大きさであれば検出することも可能です。

PGT-Aの結果判定

PGT-Aの結果は胚診断指針に基づきA判定~D判定の4つに分類されます。 この結果は胎盤になる部分の数細胞を解析していますので、胎児となる部分と完全に一致しているとは限りません。そのため、PGT-Aの結果と生まれてくる赤ちゃんの結果が不一致となる可能性もあります。PGT-Aの結果は性別の情報である性染色体も判明しますが、通常は実施施設にも開示されません。ただし、性染色体に何らかの異常が認められた場合は実施施設に知らされ、臨床遺伝専門医が必要と判断した場合に限り遺伝カウンセリングの下、開示されることもあります。

A判定:すべての常染色体が正倍数性である胚

正倍数体(euploid):すべての染色体に過不足がなく、2.00のラインに並ぶ

B判定:すべての常染色体が正倍数性であるとも異数性であるとも言えない胚 (多くは常染色体の異数性あるいは構造的異常を有する細胞と常染色体が正倍数性細胞とのモザイクである胚を指すが、アーチファクトと区別できない場合も含まれる)

モザイク(mosaicism):染色体数の正しい細胞と過不足のある細胞が混在している状態

C判定:常染色体の異数性もしくは構造異常を有する胚

異数体(aneuploid):一部の染色体に過不足のあるトリソミーやモノソミーが見られる

D判定:解析結果の判定が不能な胚

生検細胞の量不足や変性しているなど判定できない結果がでることもあります。

モザイク胚の考え方

モザイクの結果とは、生検した部分の細胞がちょうどサッカーボールのように白い正常細胞と黒い異常細胞が混在した状態です。

この結果は生検した部分にしか見られず、別の部分を生検すると異数性や正倍数性となる可能性もあるため、モザイクの結果は胚盤胞全体を表しているわけではありません。実際にPGT-Aでモザイクの結果となった胚盤胞について、再度別な四か所を生検した報告では、すべての部分で完全に一致する胚はわずか2.3%、同じモザイクが他の部分にある胚も39%とされ、モザイクの結果は胚盤胞の一部に過ぎない可能性が考えられます。

最近ではモザイク胚も移植される傾向にあります。海外のモザイク胚1,000例を移植した報告によると、着床率や流産率に影響はあるものの、これまで出生した赤ちゃんに異常はないとされています。

モザイク胚移植では、関わる染色体の番号により考え方も異なり、妊娠後の出生前検査についても検討する必要があります。結果を聞いて疑問や不安がある場合は遺伝カウンセリングで相談し、ご夫婦が納得した上で移植するかどうか決めることが重要です。

PGT-Aの利点と問題点

利点
  • 移植回数を減らせる
  • 治療期間の短縮につながる
  • 流産率が低減される
  • 移植あたりの妊娠率が向上する
  • 異常胚の凍結保存が回避できる
問題点
  • 胚生検によるダメージもあり得る
  • 移植する胚が得られないことがある
  • A判定胚を移植しても着床しない事や流産もあり得る
  • モザイク胚の判断に苦慮することもある
  • 出生児と結果が不一致となることもあり得る(2~3%程度)
  • 保健適応外となり高額な治療・検査費用が必要

PGT-Aの対象(新見解)とお申込方法

対象

1.反復ART(体外受精・胚盤胞移植)不成功の方

  • 2回以上の体外受精胚移植の不成功の既往
変更点:不成功が連続していなくてもよい。

2.反復流産の既往がある方

  • 過去に2回以上の流死産を経験
  • 染色体構造異常の場合を除く
  • 子宮形態や抗リン脂質抗体症候群の有無は問わない
変更点
  • ご夫婦の染色体検査は必須ではない
  • 子宮の形態異常や抗リン脂質抗体症候群の有無は問わない
ご夫婦のいずれかに染色体構造異常が認められる場合はPGT-SRをご覧ください

申込の流れ

  1. 検査の希望を担当医師に伝えてください
  2. 日本産科婦人科学会所定の動画を視聴いただきます(動画はこちら)
  3. 日本産科婦人科学会所定のチェックシート並びに医師から説明を受け、当院同意書を提出いただきます
  4. 検査実施可能となります

PGT-Aに関する遺伝カウンセリング(オンラインでも対応

当院ではPGT-Aについての疑問や不安、結果の意味が良くわからない、モザイク胚の移植への迷い、PGT-A後の胚で妊娠し出生前検査について迷う時などの相談に応じています。遺伝カウンセリングはオンラインで対応していますので、ご自宅からお気軽にご利用下さい。 ※ 詳細は遺伝カウンセリング(こちら)をご覧ください