コラム

COLUMN

社会的卵子凍結の有効性~when is the best timing?

高輪院の副院長の橋本朋子です。
先日開催された第40回受精着床学会にて「日本における社会的卵子凍結について考える」というワークショップにて発表してきました。
卵子凍結保存の最大の目的は将来の妊娠と出産のための備えとすることです。日本においても実施例は増加傾向にあるものの、利用率を含めた治療実績についての報告は少ないのが現状です。
京野アートクリニックにおける社会的卵子凍結保存の実績は、日本国内では上位に入ると思います。そのため、当院の2014年から2021年末までの実施成績を、凍結卵子の利用率と生児獲得者12人の背景を中心に発表させていただきました。

一般的に卵子1個あたりの妊娠率は女性の年齢にもよって3.5-12%程度と考えられていますので、卵巣刺激を行うことでできるだけ多くの卵子を得ようとアプローチするのが通常です。

ただ、実際には当院の実績でも、最小4個の凍結保存で生児を得た方もいらっしゃいますので、

卵子の数を多く採るということに執着しすぎる必要もないとも考えます。

背景・成績

実際に、治療されている患者さんを見ていると、バリバリと仕事をされている方も多く、

こうした数値的なデータを示すと、そこに到達できないことが悪いことのように受け取ってしまったり、それによる傷つきもあるように感じています。

数字は大切ですが、卵巣予備能には個人差もあり、参考値として受け止める必要もあるとも思います。

当院の実績では出産に至った最高齢は42才時に凍結保存された方であり、最近報告されたニューヨーク大学の報告では43歳が最高齢でしたので、若い方に比べて可能性は低下するものの42-3才まではチャンスがありうると考えられます。

一方で卵子凍結には課題もあります。

一つは凍結しておいた卵子の利用率の低さです。これは日本全体の問題として言えることですが、当院での卵子利用率は凍結患者あたり15%でした。NY大学の論文では利用率が60%であり、それに比べると低いと言わざるを得ません。

現在、日本では婚姻関係のある夫婦か事実婚カップルしか、凍結卵子を用いた治療を行うことができません。卵子凍結を希望される方の多くは未婚の方であり、利用するにはパートナーをみつけ、妊娠と出産について二人の考えが揃い、しかもキャリアとの折り合いもよいという状況をつくる必要があります。

社会全体で、卵子凍結を少子化対策として考えるのであれば、利用率を高めるための施策(マッチング機会の増加やドナー精子利用容認)がセットで必要と思われますが、これには様々な法整備も必要です。

教育的な観点からは、未来の妊活対象者に対しては社会的卵子凍結を啓蒙するよりもむしろ妊孕性と自然妊娠についての教育機会を設けることが必要です。

その他、女性活躍の場を広げ、若年で妊娠・出産しても容易に社会復帰できるような環境整備が重要と考えられることを報告してきました。

同じセッションにおいては、女性起業家でもありアーティストとしてもご活躍されているスプツニ子!さんがご自身の体験を話されていました。30代前半で卵子を凍結保存され、その後幸いに自然妊娠されたそうですが、卵子を凍結保存できていたことが心理的安定につながったこと、それによって同世代の働く女性達に推奨するきっかけになっていること、現時点で凍結卵子を利用してはいないが第二子治療に使えると考えていること、それによって十分満足であり有用と考えていること、を強調されていました。

患者さんの立場から感じられるメリットはまさに十人十色であり、このような利用方法もアリだと感じます。

京野アートクリニック高輪

副院長 橋本朋子