保険適用後のAMH検査について
AMH(抗ミュラー管ホルモン)は卵巣予備能のマーカーとして広く知られるようになりました。
現在では不妊治療の現場のみならず、一般の産婦人科やがん治療の領域においても活用されています。
今年4月に開始した不妊治療の保険適用に伴いAMHも新たに保険収載されており、より身近な検査として認識されるようになっています。
今回は4月から保険収載となったAMHについて、保険適用となる条件や回数、当院での検査方法についてご説明いたします。
保険適用の条件
AMHは不妊治療を行っていればいつでも誰でも保険で検査できるわけではありません。保険適用となるには条件があります。
AMHは体外受精を行う場合の卵巣刺激方法を決定することを目的として保険で検査を行うことができます。
よって自費で採卵を行う場合や一般不妊治療(タイミング法や人工授精)を行う場合、あるいは一般の婦人科などで卵巣予備能を調べる場合は保険適用外となります。
保険で算定できる頻度
保険で検査を行う条件を満たしている場合には6カ月に1回の頻度でAMHを保険で検査を行うことができます。
AMH値は年齢とともに値が低下することが知られていますが、それ以外の原因でも値が変動するという報告があります。
例えば、AMH値が低下する要因として経口避妊薬(ピル)の内服後やチョコレート嚢胞などの切除術後、喫煙などです。
また、同一周期内でも卵胞期に上昇し、黄体期に低下するといった報告もあります。一度の測定値のみで評価するのではなく、定期的に測定することが必要です。
当院で行っているAMH検査について
当院では要件を満たせば保険でAMH検査を行っております。
保険適用前後では、検査の実施頻度なども変わりましたのでお知らせいたします。
【保険適用外になる場合】
AMHは卵巣予備能の評価として有用な検査ですので、医師が必要と判断した場合には自費で検査を行うこともあります。
例えば、早発卵巣不全を疑う場合、卵巣の摘出や一部切除術後、抗がん剤や放射線治療前後、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)を疑う場合、社会的卵子凍結の場合などです。
また、自費で採卵を行う場合にはAMH検査も保険適用外になります。
【検査をおこなうタイミング】
保険で検査を行うタイミングは採卵のための卵巣刺激を行う周期の治療計画時や、卵巣刺激開始日が多いです。
当院では6カ月に1回を目安に実施しています。
10月に入り保険適用開始から6カ月が経ちましたので、2回目の検査ができる患者さまもいらっしゃいます。
検査部ではAMHの検査実施日を管理しておりますので、検査が必要な時期になりましたら医師からご案内させていただきます。
自費検査の場合も6か月に1回を目安としていますが、卵巣機能やその他の所見をみて、それよりも短い頻度で検査を行うこともあります。
患者さまからのご希望でも検査を承っておりますので、ご希望の方はお気軽にスタッフまでお声がけください。
【検査方法】
仙台院、高輪院では性ホルモン検査機器と同様の機器で測定しております。
ホルモン検査と同様、採血から1時間以内に検査結果をご報告しております。
多くの場合は検査結果を当日中にご説明することで、卵巣刺激法の決定に役立てております。
AMHの検査精度は近年大きく向上しております。
以前は検査の再現性が悪く、値のバラツキを示す変動係数(CV値)が20%程度でした。さらに溶血やリウマチ因子などの影響を受けるという報告もありました。
現在使用している検査試薬は値のバラツキも大きく改善し、溶血などの影響もほとんど受けなくなりました。当院ではCV値が5%未満と他の性ホルモン検査と同程度の再現性を示しており、安定した測定ができております。
これまでは値の変動が検査試薬や検体の状態に起因することが多かったのですが、検査機器や試薬の改良により、より精度の高い検査になってきました。
盛岡院では外注検査で行っておりますが、使用している検査機器や試薬の精度は3院同様です。
【検査の費用】
保険適用の場合:およそ¥1,800(3割負担)
当日行う治療内容によって加算等がありますので詳しくはスタッフまでお問い合わせください。
自費の場合:¥6,600(税込)
AMHについて気になることや疑問点がございましたら、気軽にお声がけください。
京野アートクリニック仙台
検査部 土佐 知美
参考文献
1)浅田 義正 . よくわかるAMHハンドブック 女性を診るすべての医師へ 第2版 . 協和企画 . 2018 .
2)DOLLEMAN, M., et al. Reproductive and lifestyle determinants of anti-Müllerian hormone in a large population-based study. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2013, 98.5: 2106-2115.
3)KOVAČEVIĆ, Vera Miodrag; ANĐELIĆ, Luka Momir; JOVANOVIĆ, Ana Mitrović. Changes in serum antimüllerian hormone levels in patients 6 and 12 months after endometrioma stripping surgery. Fertility and sterility, 2018, 110.6: 1173-1180.
4)LAMBERT-MESSERLIAN, Geralyn, et al. Levels of antimüllerian hormone in serum during 5)the normal menstrual cycle. Fertility and sterility, 2016, 105.1: 208-213. e1.
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