異なるステージの胚の再凍結が胚の発生能に及ぼす影響
今回のコラムでは、培養部の抄読会で取り上げた論文をご紹介いたします。
胚を2回凍結・融解した場合、臨床成績や胚発生にどのような影響があるのか検討した論文です。
胚の凍結保存は生殖補助医療の基本的な技術であり、凍結融解胚移植(FET)により、累積出生率を向上させるとともに、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクを抑えることができます。
検討を行った施設では初期胚や胚盤胞を再凍結することがあり、再凍結は有用な選択肢になりうるとしています。しかし、胚の再凍結が臨床成績に及ぼす影響についてデータは限られていることから、異なる発生段階で2回凍結をおこなった胚を用いたFETを対象として2グループに分けて臨床成績を評価しています。
1つ目のグループです。
再凍結群①として培養3日目に凍結・融解し、同日に再凍結した胚を用いたFETと、対照群として培養3日目に凍結した胚を用いたFETを比較しています。
結果として、採卵時の年齢、採卵実施回数、子宮内膜厚、移植胚数、生存率、着床率、臨床妊娠率、流産率、出産率は、再凍結群①と対照グループとの間に差はありませんでした。
2つ目のグループです。
再凍結群②として培養3日目に凍結・融解し、培養5日目に再凍結した胚を用いたFET、 対照群①として培養5日目で凍結した胚を用いたFETと、対照群②として培養3日目で凍結・融解し、培養5日目まで培養した胚を用いたFETを比較しています。
結果として、
分娩率:対照群①、②と比較し再凍結群②で有意に低下
臨床妊娠率:対照群①と比較し再凍結群②で低下(有意差なし)、対照群②と比較し再凍結群②で有意に低下
着床率:対照群①と比較し再凍結群②で有意に低下、対照群②と比較し再凍結群②でわずかに低下(有意差なし)
流産率:対照群①、②と比較し再凍結群②でわずかに上昇(有意差なし) となりました。
これらの結果から、著者らは胚盤胞期での再凍結は胚の発生能に顕著な影響を及ぼすものの、8細胞期での再凍結は影響を及ぼさないことが明らかになったとともに、今後、複数回の凍結・融解の影響に関するより多くのデータが必要であると結論づけています。
論文紹介のコラムでは、今後も抄読会で取り上げた論文についてわかりやすくご紹介いたしますとともに、皆様に役立つ情報をご提供できるよう努力してまいります。
京野アートクリニック仙台 培養部
竹内 渚
引用論文
Effect of the Re-Vitrification of Embryos at Different Stages on
Embryonic Developmental Potential
Jingyu Li, Shun Xiong, Yanhua Zhao, Chong Li, Wei Han and Guoning Huang Chongqing Key Laboratory of Human Embryo Engineering, Chongqing Reproductive and Genetics Institute, Chongqing Health Center for Women and Children, Chongqing, China