コラム

COLUMN

SDGsの視点から性と生殖の健康支援を再考する

2022年9月4日に行われた日本生殖看護学会に参加いたしましたので、ご紹介いたします。
今回はWeb開催となりましたが、「SDGsの視点から性と生殖の健康支援を再考する」というテーマで実施されました。最近、みなさんも耳にすることが多くなったと思いますが、SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称であり、「持続可能な開発目標」のことです。国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標があります。

「SDGsと生殖ってどんな関係があるの?」と思われる方も多いと思います。私自身も学会に参加するまで、あまり関係性が理解できておりませんでしたが、実は生殖に関係することがいくつかあることを学びました。

3.すべての人に健康と福祉を」の中には具体的に「2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする」とターゲットが設定されています。
4.質の高い教育をみんなに」では、すべての人々に公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進するとして、性教育やプレコンセプションケアの充実があげられています。
5.ジェンダー平等を実現しよう」では、男女平等を実現し、すべての女性と女児の能力を伸ばし可能性を広げようと、女性であることが性と生殖の健康を脅かさないための支援があげられています。
8.働きがいも経済成長も」では、すべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事を推進しており、不妊治療と仕事の両立があげられています。

これら以外でも、性と生殖に関係する開発目標がいくつかあることを学びました。子どもを産むか産まないのかを選択する以前の段階で、充実した性教育を受けること、受けられる環境であることが重要です。不妊治療をする場合は、仕事をしながら続けられる環境であること、妊娠後は安心して出産できる保健サービスがあり、情報が得られることが求められます。

4月から不妊治療の保険適用が開始されました。生殖医療にとって、大きな変化だと思います。今回の学会では、保険適用化に関する講演が多くありました。経済的負担が減ったメリットもありますが、治療計画が必要なため待ち時間の増加、保険適用内の治療による制限など、様々な問題点も出てきていることが報告されていました。

SDGsは基本理念に「誰ひとり取り残さない」を掲げています。個々人が関心を持ち目標達成することが豊かな社会を実現し、今以上に不妊治療を受けやすい環境が整うのではないかと思っています。

京野アートクリニック仙台
看護部 中森美和